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シドニー 1/2 
中国人富裕層が殺到するシドニー

シドニー

ここまで香港(全3回)、オークランド(全2回)、ワイヘキ島(全1回)と紹介してきましたが、今回と次回でシドニーについて紹介します。オークランドとワイヘキ島を訪れた後、シンガポールに戻る中継地としてシドニーを訪れました。シドニーを訪れたタイミングがちょうどチャイニーズニューイヤーの間で、オペラハウスやハーバーブリッジが見渡せる人気の観光スポットは、ほぼ中国人観光客に占拠されていました。

シドニーを訪れるのは、マッキンゼー3年目に出張で来た時以来なので10年ぶりです。チャイニーズニューイヤーということもあったかもしれませんが、今回10年ぶりにオーストラリアを訪れてみて、ものすごく国際化が進んだことに驚きました。オーストラリアを訪れる海外観光客は2010年以降、年5~10%のペースで拡大していて、昨年は約750万人にまで増えました。オーストラリアの人口が約2,500万人であることを考えるとかなりの数字です。10年前に訪れた時は、レストランシーンもそれほど充実していませんでしたが、海外からの観光客の増加により日本のチェーン店も含めて大幅に数が増えていました。

近年日本食チェーンも増えている
近年日本食チェーンも増えている

海外からの観光客だけでなく、移住者も増えています。オーストラリアの投資家永住権 (SIV: Significant Investor Visa)は、以前は100万豪ドル(約8,500万円)をオーストラリアに投資することで取得できましたが、このハードルが2012年に500万豪ドル(約4.3億円)に引き上げられました。中国人を中心として予想以上の応募者が集まったことが、金額が引き上げられた理由です。しかし金額のハードルが引き上げられても、中国人のSIVに対するニーズは衰えず、2012年の導入以降昨年までに、中国人だけで2,000人近い応募があったようです。SIVは500万豪ドルをオーストラリアの債券や不動産に加えて、最低30%ベンチャー企業の株式やベンチャーキャピタルに投資しなければならないので、元本が毀損リスクもありますが500万豪ドルを投じて損を出すリスクをものともしない中国人富裕層はたくさんいるようです。

オーストラリア政府にとってもこれらの投資家永住権は、自国の債券・不動産・ベンチャーマーケットを活性化させるだけでなく、永住権取得後に活発に消費してもらうことで税収増にもつながります。SIVは500万豪ドルの投資を4年間継続しなければならないため、せっかちが多い中国人富裕層の為なのか、PIV (Premium Investor Visa)という1,500万豪ドル(約13億円)の投資を1年間行えば永住権が取得できるという、さらにハイエンドの制度も昨年7月から導入されています。

エンリッチ シドニー3

ただ、こうした中国人を中心とした海外からの富裕層の流入は現地コミュニティからの反発も呼んでいます。写真にあるようなシドニー近郊のマリーナを備えた高級住宅街の住宅は、中国人富裕層の爆買いによって価格が高騰し、現地の人の手には届かなくなりつつあります。また、シドニーやゴールドコーストの高層コンドミニアムも中国人富裕層に人気で、物件によっては居住者がほぼ全て中国人となっていて、従来からのコミュニティに溶け込まず自分たちだけで好き勝手に振る舞っているという不満も現地の人から聞きました。

岡村聡

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