ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

シンプルな言い回しを好み、小難しい話を嫌う理由

一方で、成功者が難しい言い回しを避ける理由は明白である。

成功者というのは、周囲の人をうまく使う能力に長けており、それ故にビジネスをうまく進めることができる。自分自身がやさしい表現でシンプルに説明していれば、周囲の人が理解できないという事態を回避できる。

周囲の人にうまく自身の意図を伝えられない場合、連絡が重なったり、後で修正が入るといった形で、非効率が生じてしまう。稼いでいない人にとっては、他人とのコミュニケーションが多少、非効率でも大きなマイナスにはならないかもしれないが、大金を稼げる人にとって時間はダイヤモンドより貴重である。たとえ1回でも、メールや電話を追加でやり取りすることの損失は計り知れない。

シンプルな表現に徹することには、相手を選別するという効果も期待できる。

先ほどから説明しているように、小難しい表現をする人や、ペラペラと単語ばかり並べる人は総じて仕事ができない。こうした人たちとはできるだけ関わらないようにしないと生産性が落ちてしまう。

お金持ちは生産性に敏感であり、事情があって付き合いを回避できない場合を除き、こうした人たちとは極力、関わらないよう努力している。小学生でも分かるような表現をしていれば、無能な相手は自然と近寄ってこなくなるので、便利なフィルターとして機能するのだ。

物事をシンプルに表現できないことは、不測の事態への対応力という点でも違いが生じる。

大きな変化が生じた時、右往左往して決断できなくなる人をよく見かけるが、それは業務の本質をしっかりと理解していないからである。そのビジネスの本質が何なのか、小学生でも分かるように説明できる人は、ビジネス上のトラブルや事故、災害にが発生しても、優先順位をすぐに決めることができ、結果として損失を最小限に食い止められる。

一方、ビジネスの本質を的確に理解していない人は、状況に応じて判断できないので、あらゆる場面を想定したマニュアルがないと右往左往してしまう。こうした行動を繰り返していては、損失が累積し、経済的には劣位に置かれることになる。

つまらない見栄を張らず、できるだけシンプルに物事を理解し、できるだけ簡単に説明するというのは、究極のお金持ちマインドである。この事実に気付かない人は、いつまで経っても、経済的に豊かになることはできない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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