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成功する人はたいていミッションを持っている

純粋なお金儲けであれば、目先の小さな利益を優先することで、手っ取り早くお金を稼げる。リスクが高く、難易度が高いビジネスに取り組むよりは、さっさとお金を稼いだ方が合理的だ。しかしながら、こうした目先の利益を追求するビジネスは利益率が高くないことが多い。加えて言うと、こうしたビジネスには多くの人が参入を目指すので、ある方法がうまくいくと分かってしまうと、競合が一気に増え、たちまち稼げなくなってしまう。

金銭欲があれば実現できるビジネスというのは、実はそれほど儲からず、しかも儲けられる期間が短いのだ。

一方、リスクは大きいが、難易度が高いビジネスは、失敗する可能性も大いにあるが、うまくいった時には大きな利益が得られる。その理由は、難易度が高いということは、多くの人が求めていたにもかかわらず、誰も実現できなかったということを意味しており、それが実現できれば、顧客から高い評価が得られ、結果的に事業者側の価格決定権が強まるからである。

だが、リスクが高く難易度が高いビジネスは、取り組む人に相当な志がないとうまくいかないことが多い。結果的に、こうしたビジネスで成功するためには、それなりのミッションを持つことが必須要件となる。

加えて言うとミッションがあると、失敗した時の対応がまるで変わってくる。単に金銭目的の場合、失敗するとやる気を失うことも多いが、ここに使命感が加わっていると、何度でもチャレンジすることができる。多くの成功者がそうだが、1回のチャレンジでうまくいくケースは圧倒的に少なく、たいていの人が成功するまでに、複数回、あるいは十回以上の失敗を繰り返している。

失敗に負けず、試行錯誤を繰り返して成功を勝ち取るには、強い精神力が必要であり、ミッションを持つことはその大きな助けとなる。

テスラCEOのイーロン・マスク氏や、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、zozo創業者の前澤友作氏など、成功した起業家はどういうわけか、宇宙旅行に行きたがる傾向が顕著である。宇宙旅行は挑戦者にとって大きなロマンとなっているようだが、宇宙開発の世界では、各プロジェクト(あるいは業務、任務)のことをミッションと呼ぶ。

宇宙開発はあくまでチャレンジの世界であり、単なる業務や仕事という位置付けではないため、この呼び方が定着したものと思われるが、こうした事実からも起業家と使命感というのは、親和性が高いことがお分かりいただけると思う。

ちなみに前澤氏は、会社を売却後、お金配りをある種のライフワークとしている。彼の行動に賛否両論はあるだろうが、これもひとつのミッションであると考えると、その行動も納得できるのではないだろうか。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一 著
 
「日本は小国になるが、それは絶望ではない」
KADOKAWA
単行本 1,430円
 
国際競争力の低下と少子高齢化が進む日本の未来とは?

将来の日本は小国になると予想し、小国になることは日本再生のチャンスであると唱える気鋭の経済評論家が、戦後最大の転換期を迎えた日本の新しい国家像を紐解く一冊。


加谷珪一

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