心のなかに解説者を持ち、
自分を客観視する
とはいえ、人とはそれほど強いわけではなく、客観視が大事だとわかっていても、ついつい主観的、ご都合主義に陥る場面はあります。そこで、ぜひ試みていただきたいのは、「心のなかに解説者の自分をつくる」ということです。
我々の心のなかにはもう1人の自分が存在し、「どうせ無理」「この方が儲かるぞ」とネガティブな言葉や都合のいい言葉を投げかけてきます。そして、この声に心を占領されてしまうと、そのまま言葉通りに行動を取ってしまうのです。
これを避けるためにできるのは、さらにもう1人、自分に対する解説者をつくること。この解説者に自分の行動を実況させ、客観的に自分の心理をひも解いていくのです。
そうすることで「いま、無理だと考えているけれど、あえて失敗しても立ち向かうことで、貴重で必要な経験を積むことができる」など、本当にすべき行動が見えてきます。つまり、主観的な自分の声と客観的な自分の声をしっかりと聞き、かつ解説者が語る客観的なストーリーを大切にするのです。こうすることで、自身の弱さも認めることができますし、その上で前に進むこともできます。これは、多くのアスリートも実践しているメソッドです。
あるいは、プライドをはき違えず、無様な自分を許容することも大切です。そもそも、見栄や外聞にこだわるあまり、下げる頭を下げられなかったり、恥をかくこともできず、ビジネスがうまくいかないなら本末転倒。好きなこと、胸を張ってビジネスを続けるために泥をなめることも厭わないような人でないと、長きにわたり成功は収められません。
プロアスリートの世界でも、一流の選手は負けてもしっかりとメディアに対応し、己のミスを認めています。そのためには、「自分はどこに向かっているのか」「何を目指すのか」「何を求めているのか」など、心のなかに確固として哲学を持つことです。結果、生き残るビジネスを育てられるのではないでしょうか。
*この記事は2017年1月に掲載されたものです
一流だけが知っている自分の限界を超える方法
KADOKAWA/中経出版 1,404円
名だたるトップアスリートが指名するメンタルトレーナーである著者が、彼らと真剣に向き合う中で見出した「人間は本来負けたがっている」というオリジナルのスポーツ心理学をベースに、「勝ち」への執着を捨て、限界突破のための「負け」を知る究極の方法を説く。
高畑好秀 公式サイト: www.takahata-mental.com