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富裕層と時代の流れ

大きな動きは予測することが可能だ

投資の世界も同じだ。今ではヘッジファンドやデリバティブというキーワードは誰でも知っているものである。だが20年くらい前には、その存在を気にしている人はほとんどいなかった。

だがこの言葉自体が世の中に出回り始めたのは意外に早く、メディアではこのキーワードはかなり積極的に取り上げられていた。当時の米中央銀行(FRB)議長のグリーンスパン氏が、デリバティブに注目しており、関連書籍を熟読しているというニュースもあった。注意深く情報を読み込んでいれば、いずれデリバティブやそれを駆使するヘッジファンドが大きな存在になることは予想できたのである。

最近は、地域から移動せず、身近な人間関係を重視する若者が増えており、消費の構造が変わっているという。地域重視の若者は、マイルドヤンキーと名付けられている。こうした動きも、実は、人口動態などの情報を分析していれば、かなり以前から予測できたことである。マイルドヤンキーというマーケッターが名付けた名称に惑わされ、まったく新しい現象として奇異な目で見てしまうと本質を見誤る。

話をITの世界に戻そう。

これまで説明してきたイノベーションに対する考え方をITの分野に応用すると、今後、どんなことが想像できるだろうか?有力なのは、コンピュータのインタフェース分野における進歩である。

コンピュータの技術は日進月歩といわれるのに、操作環境は依然として貧弱なままである。いまだにコンピュータが登場した頃と同じキーボードが健在で、マウスやタッチパネルもその延長線上でしかない。声や目の動きなどを総合的に認識する技術があれば、コンピュータの活用範囲はもっと広がるはずだ。

こうした課題を解決する技術は、すでにかなり以前から提唱されているが、まだどれも実用レベルには至っていない。だが、これらを一気に解決する手段がぼんやりとではあるが見え始めている。それは人工知能を応用した機器のロボット化である。

つまり、人間があれこれと細かい操作をしなくても、利用者の行動を把握し、それに合わせて機器の方が自動的に動いてくれるというものである。これは一種、逆転の発想である。操作しやすいように工夫するのではなく、操作しなくてもいいように機器を進化させるのである。

人工知能がもたらす最大のインパクトは、利用者の行動を分析し、利用者以上にその人物を理解し、本人に先んじて行動することである。これができるようになると、インタフェースを通じてシステムに指示するという概念が180度ひっくり返ることになる。そこには無数のビジネス・チャンスが転がっているはずだ。

具体的にどのような製品やサービスが売れるのかは現時点では分からない。だが上記のような大きな動きは予測することができる。まずは大きな動きを認識した上で、試行錯誤でより細かい製品やサービスに取り組んでいけばよい。そうすれば、必ず新しいビジネスチャンスをモノにすることができる。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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