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人並みに働けば十分と考える若者が増えている理由

せめて人並みの生活がしたい・・・・

仕事中心にならざるをえない状況が窺える
仕事中心にならざるをえない状況が窺える

この調査では、「人並みに働けば十分」という項目に加えて「人並み以上に働きたいか」という質問項目も用意されている。両者は基本的に相反する動きを見せており、人並みに働けば十分と考える人が増えると、人並み以上に働きたいという人は減る。

ただ、両者の差は、バブル期には20ポイント以上もあったが、今年の調査では15ポイント程度に縮まっている。どちらともえいないという曖昧な回答をする人の割合がバブル期に比べて著しく減ったことが主な要因である。つまり、最近の新入社員は「人並みで十分」という人が増える一方、人並み以上に働くという人も増えていることになる。

他の質問項目の結果も興味深い。「仕事中心か、私生活中心か」という質問においては、「私生活」と回答した人がバブル期に比べて激減している。バブル期はとにかく豊かなので、私生活を楽しむのがベストだったようだが、今はそのような余裕はなくなっている。まずは仕事中心であり、私生活での楽しみはかなり犠牲にしている様子が窺える。

同じ「人並み」といっても、それはポジティブな意味ではなく「せめて人並みの生活ができれば」というニュアンスが強い。調査結果は似たようなものであっても、やはりバブル期と今とでは、若年層の意識はかなり変化していると考えた方がよいだろう。

政府は企業に対して異例の賃上げ要請をしており、一部の大企業はこれに応えて賃上げを実施してきた。しかし、日本全体として給与は横ばいの状態であり、物価の伸びに収入が追い付いていない。

賃金が増えない中、労働者の残業時間は増加の一途を辿っている。2014年の所定外労働時間つまり残業時間は過去20年で最長を記録した。各社とも残業時間を減らすため、ノー残業デーなどを設定しているが、実質的に機能していないところがほとんどである。

日本企業の残業問題は、職場の雰囲気といった情緒的な部分ばかりが問題視されがちである。だが、マクロ的に見た場合、日本企業において残業時間が増えている最大の理由は、日本企業の生産性が低いからである。同じアウトプットを出すのに、より多くの労働が必要な状況に陥っているのだ。

日本全体として所得を伸ばしていくには、付加価値の高い、儲かる事業にシフトし、生産性を上げていく必要がある。そうすれば、必然的に長時間残業はなくなり、新入社員の意識も、これに合わせて大きく変わってくるはずだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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