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なぜ30年経つと家の資産価値は無くなるのか?

米国の事例から何を学ぶか

住宅は最大の資産であり商品なので、不動産の情報インフラについても日本では考えられないくらい充実している。米国の代表的な不動産検索サイトはZillowとTruliaだが、このサイトを覗けば、物件の価格、賃貸に出した場合の予想賃料、過去の売買履歴、評価額など、必要な情報がすべて網羅されている。

住宅に関する金融システムも先進的だ。日本ではローンが払えなくなると、家を追い出された上、さらに残金まで借り主が背負うことになる(リコースローンと呼ぶ)。だが、米国の場合、住宅ローンが払えなくなっても自宅を放棄すればよく、個人が借金を背負う必要はない(ノンリコースローン)。

なぜ30年経つと家の資産価値は無くなる?
米国の事例から何を学ぶか?

なぜそのようなことが可能なのかというと、家の資産価値が長期にわたって適切に維持されているからである。銀行は、借り主ではなく、家に対してローンを提供すればよく、借り主が返せなくなったら、住宅を売りに出すことでローンを回収できるのである。
このため返済額を考えずにローンを組もうとする人が多いという弊害もあるが、少なくとも住宅ローン地獄という状況にはなりにくい。

わたしたちは、家を徹底して商品とみなす米国の事例から何を学ぶべきだろうか?もちろん日本と米国とでは事情が違う。だが応用できる部分はたくさんあるはずだ。

ひとつはリフォームの考え方である。日本では、住んでいる人しか使えないようなリフォームが施されているケースが結構ある。だが、自分達のためだけにカスタマイズされてしまった家は、他人からみたら商品価値はゼロである。家は商品であるという概念を持っているだけで、リフォームの内容も大きく変わってくるはずだ。

もうひとつは、場所の問題である。家が商品であると考えるなら、駅からは遠いが環境はよく面積も広い物件と、多少環境は悪いが利便性の高い物件のどちらがよいだろうか?これは圧倒的に後者なのである。冒頭に日本の家は30年持たないと書いたが、唯一の例外が、駅近など利便性の高い物件なのである。

利便性のよい場所を選び、汎用性の高い間取りを維持し、常にメンテナンスを怠らない。マンションの場合は、それは管理が良好な物件と言い換えることができるだろう。それだけで家の資産価値は大きく上昇するのだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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加谷珪一

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