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どうなる?これからの日本の医療

加谷珪一|どうなる?これからの日本の医療

ただ、混合診療が普及したからといって、多少お金をかければ高度な治療と良質のサービスが受けられると考えるのは早計である。混合診療への移行を政府が検討している最大の理由は、医療保険財政の破たんを防ぐことであり、医療サービスの高度化を目的としたものではないからだ。

混合診療が解禁となれば、新しい薬は自由診療で使われ、保険診療では古い薬しか使われなくなる可能性が高い。しかし、新しい治療法や薬が自由診療で使えるといっても、本来であれば、保険適用だったものが、自由診療へ移行し、ただ価格が上がっただけという状況になる可能性も十分にある。

公的医療サービスの行き詰まりという点で先を行っている欧州では、アジアの病院で治療を受けるという医療ツーリズムがかなりポピュラーな存在となっている。タイなどアジア各国では、海外から患者を受け入れることを前提に、米国並みの高度な設備を備えた大病院を戦略的に建設している。

公的保険による質の低い医療サービスは受けたくないが、米国にあるような超富裕層向けの医療サービスを受ける程の経済力は持っていないという人たちは、アジアなど新興国の病院で、高度な医療サービスを受けるのである。
こうした病院の中には、日本語を話すスタッフを常駐させるところもあり、一部の日本人はすでにこうしたサービスを利用しているという。

最近では、旅行がてらアジアの都市にある歯科クリニックに通う日本人も増えてきている。多少値段は張るが、米国で教育を受けたアジアのドクターの質は高く、クリニックの設備や衛生状態は、むしろ日本より優れているくらいだという。

お金で命を買うというのは極端かもしれないが、ある程度のお金をかけないと、良質な医療サービスを受けられないという時代はすぐそこまで来ているようである。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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