ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

ビジネスは使命、復興は天命 
残された時間は自分のすべてを注ぐ

ボランティアではダメ。仕事をつくりたい

現在、アバンティは5つのプロジェクトを「ソーシャル事業」として進めています。そのうちのひとつ「東北グランマの仕事づくり」は、文字どおり被災地の雇用創出のためのプロジェクトです。

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私はこの震災は被害が甚大なだけに、自分が寄付したところでたかだが知れてる、仕事をつるくしかないと思っていました。3.11のあと、私のネットワークの仲間と話をするなかで、被災地の中でも水や食料が住宅に供給されない場所があることを知りました。それが石巻の小さな漁村・大指(おおざし)です。すぐにやんなきゃと足が動きました。

大指では、おばちゃん達(グランマ)にオーガニックコットンの残布を使って、クリスマスオーナメントを作ってもらうことを企画しました。最初のうちは大変でした。何しろ、ワカメの鍬や鎌しか持ったことのない素人に値段のついた商品を作らせるわけですから。質の低いものを作って、同情で買ってもらえるのは最初だけ。「あなたには300円の工賃でやってもらってるけど、これ1000円で売るんだよ。買う?」と厳しくダメ出ししました。なぜかというと、私はボランティアではなく、仕事をつくりたかったんです。

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商品が仕上がると、それぞれのプロにパッケージデザインやWEBサイトを制作してもらいました。その結果、最初のプロジェクトで2500万円を売り上げ、800万円をグランマに支払うことができました。もちろん、デザインしてくれた人など関わってもらった人にもお金を払って、きちんとビジネスとして成立させました。

自分の進む道を教えてくれた「代受苦者」たち

このプロジェクトを進める上で常に心に刻んでいた言葉が「代受苦者」です。本来、自分が受ける苦しみや悲しみを自分の代わりに受けてくれた人達、すなわち東北の人達を指します。人生は、嫌なこと苦しいことがあって当然。むしろそれがないと生きているとは言えません。でも自分で抱える以上の苦しみを代わりに受けてくれた人達がいるなら、私は彼らと共に生きていきたい。そう思える自分であったことにも誇りを持っています。それは、私が人よりも1.5倍くらい元気でスタッフにも恵まれているから。

私にとってオーガニックコットンを広めることは使命ですが、この復興にたずさわることは天命だと思うようになりました。オーガニックコットンは生業(なりわい)ですが、それを支えるものがソーシャルビジネスでありたい。いままでのスキルを全部使い切って、残された20年でソーシャル事業部をアバンティの柱にしたいと思います。


渡邊 智惠子 Chieko Watanabe

1952年北海道生まれ。明治大学商学部卒業。株式会社タスコジャパンに入社、83年取締役副社長に就任。85年株式会社アバンティ設立、代表取締役就任。オーガニックコットンとの出会いにより、「売り手良し」「買い手良し」「社会良し」の三方良しから、「作り手良し」を加えた四方良しを息長く続けるビジネスを展開。復興やこども達のためのソーシャルアクションにも精力的に取り組んでいる。

エンリッチ編集部

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