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The Style Concierge

なぜ子どもに稼ぎ方ではなく、使い方を教育するのか

究極のお金持ちは投資家

お金持ちの家庭では、子どもに対して、お金を使って何かを実現するよう課題を出す。お金を払って食べたいものを買うというのはダメである。お金を払って誰かに何かをやってもらい、その結果として、自分が望むことを実現するというプロセスが重要である。

自分で行動して実現するわけではないという点に注意が必要である。

本来であれば、自分が望むことは自分で行動して実現するべきだし、その方が、子どもの教育には有効だろう。だが、親の資産を引き継ぐことが確定している子どもの場合、それだけでは不十分である。

企業が営む事業というのは千差万別であり、どれだけ優秀な人材でも、あらゆる仕事を自分で手がけることは不可能である。だが資産家が何代にもわたって資産を維持していくためには、時代の変化に合わせてビジネスを変えていく必要がある。変化に対応できなかった資産家が没落するというのは歴史の必然であり、これだけは絶対に避けなければならない。

ここで自分で手がけることだけに執着してしまうと、貴重なビジネスチャンスを逃す可能性がある。必要であれば、お金を出し、能力を持つ他人をうまく活用して、次世代のビジネスを手がけるというスタンスが重要であり、こうした「人をうまく使う」という感覚は一朝一夕に身に付くものではない。

このため一部の資産家は、子どものうちから、お金を使って人を動かす体験を積ませ、事業というものをマネジメントする感覚をトレーニングしているのだ。

筆者は、本コラムにおいて何度か、事業家や資産家の子どもは、最初からお金儲けの感覚を身につけていることが多いという話をしたことがあるが、これは親の教育による影響も大きいと考えられる。

もちろん、人にやらせるばかりでは事業はうまくいかないので、このあたりはバランスが重要となる。だが、お金を使って何かを成し遂げうという感覚を早くから身につけていることは、相当なアドバンテージとなるだろう。

人を使って自らの資産を管理し、増やしていくという仕事を極限まで極めれば、それは投資という形になる。つまり究極的な資産家というのは投資家のことであり、歴史を見ても、何世代にもわたって富を維持している資産家は、多くが投資を生業にしている。

*この記事は2019年9月に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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