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フィンランドで検討のベーシックインカム
日本での実現可能性を考える

1人月5万円、4人家族で月20万円なら実現は可能?

先ほどの例では月8万円の給付だが、この金額については当時も賛否両論があった。ベーシックインカムは全国民に対して支給するものなので、家族4人の世帯の場合には32万円になり、年収ベースでは384万円になってしまう。人によっては最低水準の給付額として高すぎると思うかもしれない。もし月5万円の給付にすれば、年間75兆円程度の予算で済む。この水準であれば、金額的にまったく不可能という話ではなくなってくる。

もっとも、月5万円では、単身者の場合には少なすぎるという指摘が出る可能性は十分にあり、金額の設定はなかなか難しいところだ。月5万円で生活するのは無理だが、ベーシックインカムを自助努力のための最低給付と位置付けるのであれば、十分な水準と見なすことも可能である。このあたりは最低限の福祉についてどう考えるのかよるだろう。

財政的にはまったく不可能というわけではないが、実現は相当難しいという現時点での見解ということになる。実際に制度を導入できたとしても、中には労働意欲をなくしてしまう人が出てくる可能性もあり、これを危惧する声もある。ただベーシックインカムは、福祉の考え方を根本的に変革する可能性を秘めた施策であり、不可能だといって斬って捨ててしまうのは惜しい。今、導入が可能かどうかはともかくとして、侃侃諤諤の議論を行うことが重要だろう。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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