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フィンランドで検討のベーシックインカム
日本での実現可能性を考える

月8万円の給付では120兆円の財源が必要となるが

フィンランドで検討されているプランは、全国民に月額800ユーロ(約11万円)を支給するというものである。フィンランドの人口は約540万人となっており、年間費用は約7兆円に達する。フィンランドの政府支出は年間約16兆円なので、その半分が社会保障に割り当られる計算だ。ベーシックインカムの導入によって、他の社会福祉予算を停止することができるが、実現できるのかは現段階では何ともいえない。

ちなみに日本では、全国民に月8万円を支給するというベーシックインカムがかつて議論されたことがあった。もし全国民に8万円を支給すると、年間120兆円もの予算が必要となる。現在の政府予算(一般会計)は約100兆円なので、8万円の支給ではこれをオーバーしてしまう。

ただ日本における年金や医療は一般会計ではなく、特別会計などの別会計で処理されており、実際の日本政府の歳出はこれよりもはるかに多い。ベーシックインカムが導入されれば、年金は必要なくなるので、一般会計から年金特別会計への支出は不要となり、ここで10兆円を浮かすことができる。

医療についても、公的な医療保険は残すものの、一般会計からの支出をなくせば、さらに10兆円を捻出できる。さらに生活保護など他の社会保障費10兆円弱を削ることで30兆円ほどの財源を捻出することは理論上可能である。年金がなくなると、国民と企業の年金負担も必要なくなるので、この分をベーシックインカム用の税収とすればさらに28兆円を確保できる。公務員年金などもすべてベーシックインカムに統合すれば33兆円となり、63兆円までは何とか捻出できる計算になる。だが120兆円の予算との乖離はまだまだ大きい。

しかも、このケースでは、医療保険の自己負担が増える可能性があるほか、介護サービスの水準も低下させる必要出てくる。このあたりについてはかなりの議論となることは間違いない。

加谷珪一

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