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本を消費し、大切に保存しない

本の記述は正解とは限らない。問題意識と批判的視点で思考する

私は、自分の会社の社員に週に1冊以上は本を読み、定例のミーティングで感想をシェアすることを奨励しています。また、正規課程で教鞭を執る青山学院大学でも、学生に課題図書を読ませ、感想レポートを提出させています。

本の主張やメッセージについて自分の頭で徹底して考えることで、そこに書かれた理論や知識を吸収する方法を学んでほしいからこそ、やっています。しかし、時折残念なことに、感想文ではなく、単なる要約が返ってくることも少なくありません。

自分なりの視点を持って読んでいないから、ざっと内容は理解できていても、考えることができていないのです。簡単に本の要約やレポートも出来てしまう生成AIの使用も禁じています。自分の頭で考えないと、読んだ知識を血肉化できないからです。AIだけを進化させて、自分の頭を退化させることは避けたいところです。

なお本に書いてあることは、正解とは限りません。どれだけ高名な研究者であっても、本に書かれていることはその著者の意見。あくまで数ある意見のうちの一つに過ぎないのです。なので、教え子たちには口酸っぱく「要約しただけでは評価しません。自分の頭で考えること。著者に反論したり賛同した部分と感想、その理由を自分の経験則から述べなさい」と指導しています。

しかし、それでも本に正解を求めがちな人がいる。莫大な情報洪水のなかで自分なりに判断して行動することは苦痛であるため、誰かに答えを決めてもらったほうが楽だからです。この延長で、本に書かれている知識や理論を正解だと頭から思い込み、受動的に受け止めるので、要約以上の感想が生まれないのです。

「成功するリーダー」は本に正解を求めません。自分なりに問題意識があり、批判的な視点があるから、そこで論じられているのがどんな意見であれ、考える材料にしてしまいます。

仮に、まったく賛成できない意見だったとしても、頭の中で反対する理由を論じることは、思考のトレーニングとして非常に有効だと考えているのです。

読書傾向が雑食であることも成功するリーダーの特徴です。自分が好きな著者や特定分野の本ばかり読むのではなく、さまざまな意見に触れることを好みます。このような読書を繰り返すことによって、自分の知識の幅を広げ、思考する力を鍛えているのです。

結論。

「成功するリーダー」は本を消費し、内容を活かしきる!

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前川 孝雄 (まえかわ たかお)

〔株〕FeelWorks代表取締役、青山学院大学兼任講師。リクルートで『リクナビ』『ケイコとマナブ』などの編集長を務め2008 年に〔株〕FeelWorks 設立。500社超の人材育成を支援。『本物の「上司力」』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『部下を活かすマネジメント“新作法”』(労務行政)など著書多数。最新刊は『「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる』(合同フォレスト、2025年7月)

連載コラム

働きがい改革_本
前川孝雄 著
 
「『働きがい改革』に本気の上司がチームを覚醒させる」
合同フォレスト 1760円
 
官民挙げての「働き方改革」が進んだものの、日本人のワークエンゲージメントは国際比較では極めて低く、多くの人々が働く幸せを感じられていません。今求められるのは、「残業が少ない」「給料が高い」「有休が取りやすい」だけの”働き方改革”より、「持ち味を見出す」「仕事を任せる」「努力を認める」一歩先の”働きがい改革”です。チームを覚醒させて、上司自身が上司としての醍醐味を感じられる”働きがい改革”の極意を詳しく解説します。

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前川孝雄

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