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The Style Concierge

本格的な競争の場合、成功できるかどうかは親に依存しない

メンタルは基本的に本人次第

一連の思考パターンに加えて重要となってくるのが、失敗しても諦めずに何度もチャレンジできる精神力と、チャンスと感じた時に即座に行動できる決断力である。

ビジネス経験が豊富な人ほど実感として理解している通り、ビジネス・チャンスというのは意外と数多く到来するものである。だが多くの人は、チャンスに巡り会っても即座に動くことができず、そのチャンスを生かせない。あるいは、チャンスをチャンスであると認識できず、みすみすその機会を逃してしまうのだ。そして本人は「自分にはなかなかチャンスが巡ってこない」と嘆いている。
 
忍耐力も同じで、少しの失敗で諦めてしまう人と、仮に仕切り直しをしたとしても、何度でもチャレンジする人とでは最終的な成果が違ってくる。

こうした精神力は必ずしも親から遺伝するとは限らないし、後天的に確実に身につけられる保証もない。一般的には、スポーツなどに取り組むことで精神力を鍛えられると理解されているが、スポーツ経験のある人がビジネスにおいて強靱なメンタルを発揮するとは限らないのが厄介なところである。

一見するとメンタルが弱そうな人が、イザとなると強力なリーダーシップを発揮するのはよくあるケースであり、こうした精神力がどこからやってくるのかは不明だ。

成功しやすい行動パターンを身につけるなど、具体的なノウハウについては、周囲に成功者がいる方が圧倒的に有利である。その点では親が成功者というひとつのアドバンテージになるだろうが、あくまでそれはノウハウ・レベルの話である。

一方、成功に不可欠な精神力というのは、まさに本人次第といってよい。これは親から遺伝されたものでもなければ、学んで身につけるものでもなく、本人の思いがどれだけ強いのかに依存している。少なくとも、身体能力や知能テストのように最初から結果が見えているわけではなく、どんな成功者もうまくいくのか分からない中でのスタートとなる。

少なくとも、親から与えられた能力のみに依存しないという点では、ビジネスや投資は受験勉強などよりも圧倒的に公平である。社会が不公平であることを嘆く人が多いという現実を考えると、ビジネスや投資に積極的にチャレンジする人が少ないのはもったいないことだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一 著
 
「日本は小国になるが、それは絶望ではない」
KADOKAWA
単行本 1,430円
 
国際競争力の低下と少子高齢化が進む日本の未来とは?

将来の日本は小国になると予想し、小国になることは日本再生のチャンスであると唱える気鋭の経済評論家が、戦後最大の転換期を迎えた日本の新しい国家像を紐解く一冊。


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