ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

海外不動産投資の資金調達スキーム 4/4

資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルをお招きして、資産運用にまつわる旬のトピックを取り上げる、本連載。12月のテーマは、国内金融機関を利用した海外不動産投資。(1/4回から読む)前回に引き続き、注意点などを松石氏に伺っていこう。ーーー

エンリッチ マネーカフェ 1612 4

誰でも利用できるスキームではなく
経験や属性が求められる

内藤 不動産投資の初心者が、いきなり融資を受けて海外不動産投資というのはいかがですか。

松石 これまでの実績ですと、日本政策金融公庫だと融資は下りず、民間銀行は大丈夫でした。公庫は国内で賃貸業の経験があり、家賃収入を得ていないと認めてくれません。

一方、金融機関に提出する試算表と計画書のなかで、不動産収入は賃貸契約書ですぐに金額が把握でき、管理費など経費も決まっていて、ある程度の収支予測も立てやすいことから、しっかりと説明できれば通りにくいということもないようです。

内藤 ラーメン店だと、オープン後はお客も入らず赤字続きで、しばらくして上がっていくというように収益化は見えづらく時間もかかりますが、不動産は決まった家賃収入があるので、金融機関も判断しやすい側面があります。

松石 所得初年度は経費がかかり赤字になることもありますから、金融機関はランニングで収益がでるかチェックします。事業融資なので、現地の周辺相場をはじめ客観的な資料も求められます。ただし、最近はレオパレスなど日本の大手企業が海外に進出していますから、国によってはこれら企業のサイトを見せながら説明することも。法律関連など難しい内容に対しては、私が経産省やジェトロ、大使館に連絡をして情報を収集しています。申し込みから決済までは金融機関で異なるものの、2~3ヶ月を見れば十分でしょう。

内藤 海外不動産の多くはプレビルドですが、その点に対する反応はいかがでしょうか。

松石 これも金融機関で抵抗があったりなかったり…。しかしながら、日本のマンションも、青田売りの場合には2年後に竣工引き渡しとなるので、いま申し込んだ人に2年後に融資しますという流れですから、それと実情は変わりません。海外なので本当に建つのかという懸念があるでしょうから、デベロッパーの信用力を説明し、納得してもらうわけです。

内藤 融資額はどうなります?

松石 公庫の場合、1000万円~2000万円が限度です。銀行は支店や担当者でまちまちですが、基本的にはフルローンでお願いするケースがほとんどで、実際にうまくいっています。ところが、フルローンに対する概念が異なり、例えば10万米ドルの物件があり、為替レートが1米ドル113円なら円ベースで1130万円ですが、実際には110円に換算した額での融資など、少なめに見積もるようです。

内藤 為替が円高に換算されていますね。

松石 逆に円安に為替が振れるとオーバーローンになり、金融機関からすると貸したお金が1円でも使われない(余ってしまう)となると、マネーロンダリングを心配する必要があるからです。何か問題が起きた時に「貸出銀行はどこだ!」となることを、彼らはもっとも恐れています。基本的に融資したお金はすべて使うのが決まりですから、こういった措置が取られるわけです。よって、差額分は自己資金を用意しないといけません。

内藤忍

Return Top