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異業種による銀行サービス最前線 2/3

ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。今回は、銀行代理業のトレンドについて解説している。(1/3から読む)−−−

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広がるBaaSの活用
NTTドコモやJR東日本も参入

異業種による銀行代理業への参入は相次ぎ、昨年12月にはNTTドコモと三菱UFJ銀行が「dスマートバンク」のサービスを始めています。これは、同行のスーパー普通預金(メインバンク プラス)口座を利用した、dポイントがたまるデジタル口座サービスの位置づけで、専用アプリで口座を開き、dアカウントを紐づけると、さまざまな優遇を受けられます。

口座の入出金は三菱UFJ銀行のものに加え、提携先コンビニのATMが利用でき、年金の受取やEco通帳の利用の条件を満たすと、三菱UFJ銀行ATMの時間外手数料や提携先コンビニATM、「三菱UFJダイレクト」の他行宛て振込手数料が優遇されます。

ポイントに関してもドコモの利用料金の引き落としで毎月50ポイント(3年目以降は毎月25ポイント)、給与や年金の受取で毎月5ポイントが付与。他にも、アプリ内で目的に合わせた「貯金箱」を作って決めた金額を入金したり、金融のプロとAIに任せた資産運用「はたらく貯金箱」といったサービスも。ドコモの携帯料金の引き落とし口座に設定した場合、引き落とし額が口座残高を上回ると事前にメッセージが届きます。

片やJR東日本は、楽天銀行と組んで2024年春に「JRE BANK」を設立すると発表しました。同サービスはスマホアプリやウェブサイトから専用口座を開くと、駅構内のATM「VIEW ALTTE」では回数制限なく手数料無料で現金を引き出せます。銀行サービスの利用に応じてJREポイントもたまり、利用状況に応じて新幹線の優待や駅ビルなどで使える特典も用意するそうです。

前回取り上げた第一生命のサービスを含め、銀行が提供するサービスや機能を、APIを使い第三者が利用することを「BaaS(Banking as a Service)」と呼び、これにより銀行以外の企業でも自社に金融機能を導入しやすくなりました。本来、銀行業に参入するには銀行免許の取得が必要で、システムの整備など莫大なコストがかかります。ところが、BaaSを活用するとハードルが大きく下がるわけです。これまでは住信SBIネット銀行の「NEOBANK」がこの分野で先行していましたが、最近は楽天銀行の勢いが増し、「dスマートバンク」のように、メガバンクも取り組み始めました。

ご存知の通り、日本は人口減少の進展により、市場の拡大は厳しい状況を迎えています。打開策として事業の拡大が急がれていて、BaaSの活用が増えているのは、こういった背景があるからでしょう。既存事業と銀行業の相乗公開で顧客を獲得するのが狙いです。ネットバンクの普及や貯蓄から投資へのトレンドもあり金融ビジネスは伸びていますから、参入したい気持ちも理解できます。今後はさらに増えるでしょうし、それにより消費者にとっても便利でお得なサービスが登場するかもしれません。

−−−BaaSを使った銀行代理業は、今後のトレンドになるかもしれない。次回、2月最後の記事では、証券会社と銀行の協業などについて取り上げよう。

菊地宗仁_300

菊地 崇仁 (きくち たかひと)

株式会社ポイ探 代表取締役。大学卒業後、日本電信電話株式会社(現NTT東日本)入社。システム開発に携わる。2002年の同社を退社後、友人と共に起業。ポイント交換案内サービス・ポイ探の開発に携わり、2011年代表取締役に就任。現在All About、カカクコム、ECZine、日経トレンディネットへ記事を提供する他、テレビ・雑誌でも活躍中。著書に「新かんたんポイント&カード生活 (自由国民社)」、「できるAmazonスタート→活用 完全ガイド(インプレス)」他。

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