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政府が副業促進に向けて環境整備
日本の働き方はどう変わる?

現実の副業はなかなか厳しい

先日、クラウドソーシング企業の決算資料の中身がネットで話題となった。クラウドソーシング大手のクラウドワークス社に登録するクラウドワーカーのうち、月収20万円以上を稼いでいる人が111人しかいなかったからである。

クラウドソーシングは、よく知られているように、仕事を発注したい企業と、仕事を請け負いたい個人などをネット上で仲介するサービスである。フリーランスの人に加え、副業の窓口としてこれを利用している人も多いといわれる。また発注側から見れば、必要な時に必要な人材を気軽にネットで探せるため、柔軟な使い方ができるというメリットがある。

クラウドワークスに登録しているクラウドワーカーは現在約80万人。このうち、月収が20万円を超えたクラウドワーカーの数は111人となっており、全体からすればほぼゼロに近い水準だった。

こうしたクラウドソーシングで仲介される業務はどうしても汎用性の高いものとならざるをえない。このため、個人の付加価値をあまり発揮できず価格勝負に陥ってしまうリスクがある。また、参加する人が増えれば増えるほど、発注金額は安くなるため、高い単価での受注が難しくなる。

こうした状況を考えると、単純に副業が解禁になったからといって、誰もがそれなりの副収入を得られるというわけではなさそうだ。

副業は自分の付加価値を知るよい機会かもしれない

また識者の中には、政府が副業を促進することで正社員の給与に下押し圧力がかかると指摘する人もいる。確かに、副業が解禁になり、クラウドソーシングなどを使って容易に仕事を外注できるということになると、同じ仕事を社外の安い人材に発注する動きが活発化してくるかもしれない。

そうなってくると、社内の正社員の給与が、こうした外注先の人件費に引きずられる形で、徐々に下がっていく可能性は十分に考えられる。

こうした動きは同一労働・同一賃金の導入とも密接に関係してくることになるだろう。政府は副業の促進と併せて、5月にまとめる予定の「ニッポン1億総活躍プラン」に同一労働・同一賃金を盛り込む意向である。

終身雇用制度が残った状態で、この制度が導入されることになると、先ほどの副業の場合と同様、正社員の賃金が、安い非正規社員の賃金に引きずられる可能性が出てくる。

その意味で、副業は自分自身の付加価値をどう維持するのかの試金石ともいえる。副業でも十分な収益を上げられる人は、本業においても高い成果を実現できるだろうし、転職市場においても高い評価されるはずである。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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