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ソフトバンクはまったく新しい次元に突入した

スプリントの業績が回復していることは、実はソフトバンクにとって強力な追い風となる。その理由は、一度は買収を断念したTモバイルUSについて再度買収を試みることが可能となるからだ。

米国の携帯電話市場は、首位のベライゾン、2位のAT&Tの2強体制となっており、3位のTモバイルUSと4位のスプリントは、上位2社に大きく水をあけられた状況にある。ソフトバンクの孫正義社長は、スプリントの買収後、連続してTモバイルUSも買収する腹づもりだった。つまりスプリントのリストラはTモバイルUSとセットだったのである。

TモバイルUSとスプリントが合併すれば、契約者数で1位のベライゾンと2位のAT&Tに肩を並べることになるが、ソフトバンクの最終的な狙いはそこにあった。

だが、TモバイルUSの買収について当局が難色を示したことから、同社は一度、買収を断念している。ところがトランプ政権の誕生で風向きが大きく変わってきた。

孫氏はトランプ氏の当選が決まると電光石火でトランプ氏と会談、米国への巨額投資と雇用創出を約束した。トランプ氏が孫氏を高く評価したことから、米当局は合併容認に傾いており、市場ではすでにソフトバンクによるTモバイルUSの買収は既定路線となりつつある。

もし買収に成功し、併せてスプリントの業績回復も実現すれば、ソフトバンクの営業利益は2倍以上になっても不思議ではない。もしこのシナリオが実現するなら、純利益1兆円超えというのは、ただの途中経過に過ぎないことになる。もちろんリスクとのトレードオフになるが、ソフトバンクはまったく新しい次元に突入したとみてよいだろう。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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